れんきんさぎ |
錬金詐欺 |
冒頭文
詐欺は昔から錬金術の附き物になって居る。既に錬金術そのものが、金がほしいという動機が主となって企てられたものであるから、詐欺と縁の深いのは当然のことである。尤も、錬金術の抑(そもそ)もの起りは必ずしも黄金製造のためではなかった。即ちその濫觴(らんしょう)ともいうべきは古代エジプトに於ける金属の染色術に外ならなかったのである。古代エジプトに於ては紫と黒の二色が尊ばれ、織物の染色と共に、主として僧侶の
文字遣い
新字新仮名
初出
「探偵文藝 第2巻第1号」奎運社、1926(大正15)年1月号
底本
- 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
- 光文社文庫、光文社
- 2001(平成13)年2月20日