みずくさ |
水草 |
冒頭文
朝の十時ごろ、俳友の国手石亭(ドクトルせきてい)が葱(ねぎ)とビールをさげてやってきた。 「へんな顔をしていますね。どうしました」 「田阪(たさか)で池の水を落とすのが耳について眠れない。もう三晩になる」 「あれにはわたしもやられました。池を乾して畑にするんだそうです」 「それはいいが、そのビールはなんだね」 「あい鴨で一杯やろうというのです。尤もあひるはこれからひねりに行くのですが
文字遣い
新字新仮名
初出
「宝石」1947(昭和22)年1月号
底本
- 日本探偵小説全集8 久生十蘭集
- 創元推理文庫、東京創元社
- 1986(昭和61)年10月31日