はいくというもの |
俳句と云ふもの |
冒頭文
○俳句と云ものを始て見たのは十五六歳の時であつたと思ふ。父と東京へ出て来て向嶋に住んでゐる所へ、母や弟妹が津和野の家を引き払つて這入り込んで来た。その時蔵書丈は売らずに持つて来たが、歌の本では、橘守部の「心の種」、流布本の「古今集」、詩の本では「唐詩選」があつた。俳諧の本は、誰やらが蕉門の句を集めた類題の零本で、秋冬の部丈があつた。表紙も何もなくなつてゐて、初の一枚には立秋の句があつたのを記憶して
文字遣い
新字旧仮名
初出
「俳味」1912(明治45)年1月号
底本
- 日本の名随筆 別巻25 俳句
- 作品社
- 1993(平成5年)3月25日