にじゅうじんかくしゃ
二重人格者

冒頭文

一 河村八九郎は今年二十歳の二重人格者である。 第一の人格で彼は大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)となり、第二の人格で高師直(こうのもろなお)となった。 彼がどうしてこのような二重人格者となったかは、はっきりわかっていない。父が大酒家であるという外、父系にも母系にもこれという精神異常者はなかった。ただ父方の曾祖父が、お月様を猫に噛ませようと長い間努力して成功せず、疲労の結

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1927(昭和2)年11月号

底本

  • 探偵クラブ 人工心臓
  • 国書刊行会
  • 1994(平成6)年9月20日