「わたしなんか、麻酔剤をかけなければならぬような手術をうけるとしたら、知らないドクトルの手にはかかりたくありませんね」 と美くしいマダム・シャリニがいいだした。 「そんなときは、やっぱり恋人の手で麻酔(ねむ)らせて貰わなければね」 老ドクトルは、自分の職業のことが話題にのぼったので、遠慮して黙りこんでいたが、そのとき初めて首をふって、 「それは大変な考え違いですよ、マダム。