やまあそび
山遊び

冒頭文

足守川にかゝつて居る葵橋を渡る頃は秋晴の太陽が豐年の田圃に暗く照つて居た。八幡樣の山では松の木立の下に雜木がほのかに黄ばんで櫨の木の紅葉の深紅なのが一本美しく日に透いて居るのが長閑に見えた。河原には、未だ枯れぬ秋の草が野菊交り、色の褪せた死人花交りに未だ青く殘つて居て、親馬についた子馬が其の草を食つて居た。澄んだ細い流れは、日を受けてその間に光つて居た。 隱亡の住んで居る部落を過ぎて山路

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「白樺」1911(明治44)年11月

底本

  • 定本 木下利玄全集 散文篇
  • 臨川書店
  • 1977(昭和52)年9月10日