しんしゅんぐうご
新春偶語

冒頭文

新玉(あらたま)の春は来ても忘れられないのは去年の東北地方凶作の悲惨事である。これに対しては出来るだけの応急救済法を講じなければならないことは勿論であるが、同時にまた将来いつかは必ず何度となく再起するにきまっているこの凶変に備えるような根本的研究とそれに対する施設を、この機会に着手することが更に一層必要であろうと思われる。可憐(かれん)な都会の小学児童まで動員してこの木枯しの街頭にボール箱を頸(く

文字遣い

新字新仮名

初出

「都新聞」1935(昭和10)年1月1日、「吉村冬彦」署名で。

底本

  • 寺田寅彦全集 第七巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年6月5日