かいせいねんモセイ |
怪青年モセイ |
冒頭文
夏冬繁緒、河東茂生、滋岡透、そのほかいろいろ……田舎者の私は、みんな別々の人間のペンネームかと思っていた。それぞれ文壇の大家としての敬意を心の中で払っていたら、それがタッタ一人の姿になって、香椎山中の私をヒョッコリ訪問してくれた。 せいぜい十八、九ぐらいに見える、スラリとした、鼻の左右にニキビのパラパラと出来た青年であった。極めて粗末な大学生の服を着ていた。霜降りと黒ズボンの……帽子と持
文字遣い
新字新仮名
初出
「猟奇 4巻5号」1931(昭和6)年5月
底本
- 夢野久作全集7
- 三一書房
- 1970(昭和45)年1月31日