どろぼうねこ
どろぼう猫

冒頭文

お天気のいい日に斑(ぶち)猫が縁側に坐ってしきりに顔を撫で廻しておりました。この猫は鼠を一匹も捕らぬくせに泥棒猫で、近所から嫌われていましたが、「ニャーニャーゴロゴロ」とおべっかを使うのが上手なので、この家の人に可愛がられていました。 ちょうどこの家の赤犬が通りかかって、この猫を見ると声をかけました。 「ブチ子さん今日は」 猫はふり返って、 「オヤ赤太郎さん。だんだん地

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1922(大正11)年12月14~15日

底本

  • 夢野久作全集7
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日