あぶのおれい
虻のおれい

冒頭文

チエ子さんは今年六つになる可愛いお嬢さんでした。 ある日裏のお庭で一人でおとなしく遊んでいますと、 「ブルブルブルブル」 と変な歌のような声がきこえました。 何だろうとそこいらを見まわしますと、そこの白壁によせかけてあったサイダーの瓶(ビン)に一匹の虻(あぶ)が落ち込んで、ブルンブルンと狂いまわりながら、 「ドウゾ助けて下さい。ドウゾ助けて下さい」 と言

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1925(大正14)年9月13~15日

底本

  • 夢野久作全集7
  • 三一書房
  • 1971(昭和46)年1月31日