うめのにおい
梅のにおい

冒頭文

一匹の斑(ぶち)猫が人間の真似をして梅の木にのぼって花を嗅いでみました。あの枝からこの枝、花から蕾といくつもいくつも嗅いでみましたが、 「ナアーンダ、人間がいいにおいだ、いいにおいだと言うから本当にして嗅いでみたら、つまらないにおいじゃないか。馬鹿馬鹿しい、帰ろう帰ろう」 と樹から降りかかりました。 「ホーホケキョ、ホーホケキョ」 「オヤ、鶯がやって来たな。おれは一度あいつをた

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1924(大正13)年2月4~5日

底本

  • 夢野久作全集7
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日