たぬきとよたろう
狸と与太郎

冒頭文

与太郎は毎日隣村へ遊びに行って、まだ日の暮れぬうちに森を通って帰って来ました。 「あの森は狸がいていろいろのものに化けるから、日の暮れぬうちに帰らぬと怖ろしいぞ」 とお母さんが言いきかせているからです。 ある日、太郎はうっかり遊び過ごして真暗になって帰って来ました。森の中に入ると、忽ち一丈もある位の一つ目入道が出ました。 「ヤア。大きな伯父さんが出て来た。眼玉が一つしか

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1923(大正12)年11月21日

底本

  • 夢野久作全集7
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日