ふたりのおとことにぐるまひき
二人の男と荷車曳き

冒頭文

昔ある処に力の強い、何でも上手の男が二人おりました。二人共知らぬ者がない位名高かったのですから、どちらがえらいかわかりませんでした。 ある日二人は往来で出会うとお互いに自慢をはじめましたが、ただ口で言っただけではわからないので、とうとう決闘をする事になりました。 二人はピストルを持って来て撃ち合いをはじめましたが、どこを打っても弾丸(たま)が途中で打(ぶ)つかってどっちにも当り

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1923(大正12)年11月27~28日

底本

  • 夢野久作全集7
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日