ツクツクぼうし
ツクツク法師

冒頭文

むかしあるところに一人の欲ばりの坊さんがおりました。 毎日毎日方々へお経を読みに行って貰って来たお金を一つの大きな甕(かめ)の中に溜めていましたが、だんだん一パイになってくるにつれて泥棒に取られそうなので怖くてたまらなくなりまして、或る晩のこと小僧にも誰にも知れないようにお庭の隅に埋め、その上に樫の木を一本植えました。 「樫の木よ樫の木よ、お前にそのお金はやるから大切に番をするんだ

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1925(大正14)年9月4~6日

底本

  • 夢野久作全集7
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日