おろかなおとこのはなし
愚かな男の話

冒頭文

○ 「或る田舎に二人の農夫があった。両方共農作自慢の男であった。或る時、二人は自慢の鼻突き合せて喋(しゃ)べり争った末、それでは実際の成績の上で証拠を見せ合おうという事になった。それには互に甘蔗(かんしょ)を栽培して、どっちが甘いのが出来るか、それによって勝負を決しようと約束した。 ところで一方の男が考えた。甘蔗は元来甘いものであるが、その甘いものへもって来て砂糖の汁を肥料としてかけたら一層甘

文字遣い

新字新仮名

初出

「キング」講談社、1936(昭和11)年5月号

底本

  • 岡本かの子全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1994(平成6)年2月24日