けんこうさんだい
健康三題

冒頭文

はつ湯 男の方は、今いう必要も無いから別問題として、一体私は女に好かれる素質を持って居た。 それも妙な意味の好かれ方でなく、ただ何となく好感が持てるという極めてあっさりしたものらしかった。だから、離れ座敷の娘が私に親しみ度(た)い素振りを見せるに気が付いても一向珍らしいことには思わなかった。仕事でも片付いたらゆっくり口が利ける緒口(いとぐち)でもつけてやろう。単純にそのくらいの察し

文字遣い

新字新仮名

初出

はつ湯「レッェンゾ」1935(昭和10)年1月号、春の浜別荘「週刊朝日」1935(昭和10)年3月31日、ゆき子へ「令女界」1935(昭和10)年7月号

底本

  • 岡本かの子全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1994(平成6)年2月24日