とりかえしものがたり
取返し物語

冒頭文

前がき いつぞやだいぶ前に、比叡の山登りして阪本へ下り、琵琶湖の岸を彼方(あちら)此方(こちら)見めぐるうち、両願寺と言ったか長等寺と言ったか、一つの寺に『源兵衛の髑髏』なるものがあって、説明者が殉教の因縁を語った。話そのものが既に戯曲的であったので劇にしたらと思い付いて、其(その)後調べの序(ついで)に気を付けていると、伝説として所々に出ている。此のたび機会があったのでまとめてみた。伝説に

文字遣い

新字新仮名

初出

「大法輪」1934(昭和9)年11月号

底本

  • 岡本かの子全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1994(平成6)年2月24日