めいあん
明暗

冒頭文

智子が、盲目の青年北田三木雄に嫁いだことは、親戚や友人たちを驚かした。 「ああいう能力に自信のある女はえて物好きなことをするものだ」 「男女の親和力というものは別ですわ。夫婦になるのは美学のためじゃあるまいし」 批評まちまちであった。 智子は、今から五年まえに高等女学校を卒業した。兄の道太郎と共に早く両親を喪(うしな)った彼女は、卒業後も、しばらく家で唯一の女手として兄の面

文字遣い

新字新仮名

初出

「むらさき」1937(昭和12)年1月号

底本

  • 岡本かの子全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1993(平成5)年6月24日第1刷