にんげんやまなかさだお |
人間山中貞雄 |
冒頭文
平安神宮の広場は暑かつた。紙の旗を一本ずつ持つた我々は脱帽してそこに整列していた。日光は照りつけ汗がワイシャツの下からにきにきと湧いた。前面の小高い拝殿の上には楽隊がいて、必要に応じて奏楽をした。注意して見ると、楽隊のメンバーにはアフレコ・ダビングでかねてなじみの顔ばかりである。 それから神官の行事があつた。つづいて君が代の斉唱、バンザイの三唱など型どおり行われたが、その間、出征軍人山中
文字遣い
新字新仮名
初出
「シナリオ 昭和十三年十一月臨時増刊・山中貞雄追悼号」1938(昭和13)年11月
底本
- 新装版 伊丹万作全集2
- 筑摩書房
- 1961(昭和36)年8月20日