にほんしゅみえいが |
日本趣味映画 |
冒頭文
今度私が泉鏡花氏の『日本橋』を映画化するに当つて、それが諸々方々から大分問題にされたものであつた。 『もんだいに』と云ふと、話しは大きくなるが、鳥渡(ちよつと)した言葉のはしくれにも、 『どうだい君、溝口君が芸者物を撮るさうぢやないか。日頃の唯物論は何処へケシ飛んで仕舞つたんだ!』 『いや、あの人間は、以前からあゝ云つた下町情話ものが得意なんだ。だから、つまりは昔にかへつたわけなんだ。』
文字遣い
新字旧仮名
初出
「キネマ旬報」1929(昭和4)年1月1日号
底本
- 溝口健二集成
- キネマ旬報社
- 1991(平成3)年9月1日