てんいむほう |
天衣無縫 |
冒頭文
みんなは私が鼻の上に汗をためて、息を弾ませて、小鳥みたいにちょんちょんとして、つまりいそいそとして、見合いに出掛けたといって嗤ったけれど、そんなことはない。いそいそなんぞ私はしやしなかった。といって、そんな時私たちの年頃の娘がわざとらしく口にする「いやでいやでたまらなかった」——それは嘘だ。恥かしいことだけど、どういう訳かその年になるまでついぞ縁談がなかったのだもの、まるでおろおろ小躍りしているは
文字遣い
新字新仮名
初出
「文芸」1942(昭和17)年4月
底本
- 定本織田作之助全集 第二巻
- 文泉堂出版
- 1976(昭和51)年4月25日