けいばこうぎょうとけいばきょうのはなし |
競馬興行と競馬狂の話 |
冒頭文
スピードの世の中であります。此意味に於て、競馬は最も今日高速度的世相の推移を如実に表示するものであらうかと思はれます。私が年末、大の競馬狂として之に没頭しますのも、さうした点に興味を持つからでありますが、執着の結果は春秋の競馬シーズンを待ち兼ねてどうか是が同一の興趣と実感とを室内に於て味ふ工夫もがなと、好きには身を窶すで、日夜専心専一苦心を致しました。所が思ふ念力岩をも通す譬にて、私の顔よりも馬の
文字遣い
新字旧仮名
初出
「グロテスク」1929(昭和4)年9月号
底本
- 日本の名随筆 別巻80 競馬
- 作品社
- 1997(平成9)年10月25日