あわしまかんげつし
淡島寒月氏

冒頭文

寒月氏は今年七十歳を以て二月廿三日に永逝した。本間久雄氏から、予の知るところの寒月氏を傳へて呉れと依頼を受けたので、ほんとにたゞ予の知れる限りの寒月氏——予の知らぬ他の方面の寒月氏も定めし多いだらうが、それに就ての臆測や聞取りなぞを除いて——を有りのまゝに思出づるまゝに記す。人の事をしるすに、當推量(あてずゐりやう)や嘘を交(ま)ぜて、よい加減に捏上(こねあ)げるのは、予の好かぬことである。だから

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「早稻田文学」1926(大正15年)4月号

底本

  • 露伴全集 第三十卷
  • 岩波書店
  • 1954(昭和29)年7月16日