『ゆくはる』をよむ |
『行く春』を読む |
冒頭文
薄田泣菫氏の才華はすでに第一の詩集『暮笛集』に於て、わが新詩壇上いちじるしき誉れとなりしを、こたびの集『ゆく春』の出づるに及びて、また新たに、詩人繍腸の清婉は日ごろ塵に染みたる俗心の底にもひびきぬ。ことしもうら寂しく暮れゆかむとする詩天のかなたに、世は夕づつのかげの明かに輝くを見ておどろく。 集中絶句「遣愁」の一篇を誦すれば、瘠せたる詩風に泣くの語あれど、泣菫氏が豊麗の詞藻はかの清癯鶴仙
文字遣い
新字旧仮名
初出
「明星 第拾八号」1901(明治34)年12月
底本
- 蒲原有明論考
- 明治書院
- 1965(昭和40)年3月5日