こえとひとがら |
声と人柄 |
冒頭文
或時、横須賀から東京に向う省線に逗子駅から乗ったことがあった。ところがその電車が非常に混んでいて、空いた座席が殆どなかった。丁度その時、どこかの地方の青年団の人々が乗っていたが、その中の一人が、私の乗り込んだのを見てか「おい、起て起て」と言ったら、腰かけていた人たちがみな起ちあがって、私たちに席を与えてくれた。 もしその場合に、私が目が見えていたら辞退するのであるが、私は盲人なので折角の
文字遣い
新字新仮名
初出
「垣隣り」1937(昭和12)年11月20日
底本
- 心の調べ
- 河出書房新社
- 2006(平成18)年8月30日