しょうどうぶんがく ――じょせつとして―― |
唱導文学 ――序説として―― |
冒頭文
唱導文学といふ語は、単なる「唱導」の「文学」と言ふ事でなく、多少熟語としての偏傾を持つて居るのである。事実において、唱導文学は、説経文学を意味しなければならぬのであるが、わが国民族文学の上には、特に説経と称するものがあり、又其が唱導文学の最大なる部分にもなつてゐる。だが、その語自身、あまり特殊な宗教——仏教——的主題を含んでゐる為、其便利な用語例を避けて、わざ〳〵、選んだ字面であつたのである。其れ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「日本文学講座 第二巻」改造社、1934(昭和9)年8月
底本
- 折口信夫全集 4
- 中央公論社
- 1995(平成7)年5月10日