たんかようしきのはっせいにからんだあるぎねん
短歌様式の発生に絡んだある疑念

冒頭文

今の世の学者が、あらゆる現象を、単純から複雑に展開してゆくものときめてかゝる考へ方は、多くの場合まちがつた結論に安住することになつてゐる。文学の場合もさうであつた。 沢村専太郎氏が、ふた昔も前に発表せられた、短歌様式の論(明治四十年頃の新小説)は、それまでの歌論の、ゆきつく処まで、ひき上してゐる。其後、友人武田祐吉も論じ、私も聊(いささ)か述べたことがある。 併、考へれば、私までが、簡単な論理

文字遣い

新字旧仮名

初出

「橄欖 第四巻第七号」1925(大正14)年7月

底本

  • 折口信夫全集 4
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年5月10日