にほんぶんがくのはっせい |
日本文学の発生 |
冒頭文
私は、日本文学の発生について、既に屡〻(しばしば)書いて居る。その都度、幾分違つた方面から、筆をおろしてゐるのだが、どうも、千篇一律になつて居さうなひけ目を感じる。此稿においては、もつと方面を変へて、邑落の形と、その経済の基礎になつて行くものが、文学の上に、幾分でも姿を見せてゐようと言ふ様な方面に、多少目を向けて行きたく考へる。 日本における文学発生——必しも、我が国に限らぬことだが——は尠くと
文字遣い
新字旧仮名
初出
「日本文学講座 第一巻」改造社、1933(昭和8)年10月
底本
- 折口信夫全集 4
- 中央公論社
- 1995(平成7)年5月10日