かていしゅうかんのおしえをろんず
家庭習慣の教えを論ず

冒頭文

人間の腹より生まれ出でたるものは、犬にもあらずまた豕(ぶた)にもあらず、取りも直さず人間なり。いやしくも人間と名の附く動物なれば、犬豕(けんし)等の畜類とは自(おの)ずから区別なかるべからず。世人が毎度いう通りに、まさしく人は万物の霊にして、生まれ落ちし始めより、種類も違い、階級にも斯(か)くまで区別のあることなれば、その仕事にもまた区別なかるべからず。人に恵まれたる物を食らいて腹を太くし、あるい

文字遣い

新字新仮名

初出

「家庭叢談 第九号」1876(明治9)年10月

底本

  • 福沢諭吉家族論集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1999(平成11)年6月16日