しじへんそう |
死児変相 |
冒頭文
母上さま、—— 久しくためらつてゐましたこの御報告の筆を、千恵はやうやく取りあげます。 じつは姉上のお身の上につき申しあぐべきことのあらましは、もう一月ほど前から大よその目当てはついてをりました。だのに千恵は、「わからない、わからない」と、先日の手紙でも申しあげ、またつい一週間前の短かい手紙にも繰りかへしました。それもこれも嘘でした。いいえ、嘘といふよりむしろ希望のやうなもので
文字遣い
新字旧仮名
初出
「別冊芸術」1949(昭和24)年3月
底本
- 日本幻想文学集成19 神西清
- 国書刊行会
- 1993(平成5)年5月20日