みずにしずむロメオとユリヤ |
水に沈むロメオとユリヤ |
冒頭文
弗羅曼(フラマン)の娘、近つ代の栄えのひとつ、 弗羅曼の昔ながらに仇気ない……(オノレ・ド・バルザック) 黄昏(たそがれ)の街が懶(ものう)く横たはつたまま、そつと伸びあがつて自分の溝渠(ほりわり)に水鏡した。——この様な句を読むとすると、嘗(かつ)てロデンバックの短篇集を繙(ひもと)いたことのある人ならきつとあの廃都ブリュジュの夕暮を思ひ描くに相違ない。そして彼等は聴くであらう、同時
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文学」1930(昭和5)年3月
底本
- 日本幻想文学集成19 神西清
- 国書刊行会
- 1993(平成5)年5月20日