ジェイン・グレイいぶん |
ジェイン・グレイ遺文 |
冒頭文
チュドル王朝第三代エドワアド六世の御宇(ぎょう)のこと、イングランドのほぼ中央リスタアの町に程遠からぬ、ブラッドゲイト城の前庭を、のちのエリザベス女王の御教育掛(がかり)、碩学(せきがく)ロウジャ・アスカムが横ぎつて行く。季節は卯薔薇(うばら)の花乱れ咲く春、それも極くのどかな午(ひる)さがりと思ひたい。霧の深い秋のことではなかつたらう。アスカムの齢(とし)は三十六か七か、それにしては悠々たる足ど
文字遣い
新字旧仮名
初出
「セルパン」1932(昭和7)年11月
底本
- 日本幻想文学集成19 神西清
- 国書刊行会
- 1993(平成5)年5月20日