ノンシャランどうちゅうき 03 しゃにくさいのチャイナふく ――ちちゅうかいひかんちのまき―― |
ノンシャラン道中記 03 謝肉祭の支那服 ――地中海避寒地の巻―― |
冒頭文
一、誦(ず)するはこれ極楽浄土の歌。一九二九年二月十日、巴黎(パリ)なる里昂(リヨン)停車場を発したる地中海行特急(ペ・エール・エーム・エクスプレッス)第七九五号列車は、蒼味をおびた夜空に金色の火花を吹き散らしながら、いまや、アルルの近郊(プロヴァンス)に近い平坦な野原に朦朧とたたずむ橄欖(オリーブ)の矮林(わいりん)のそばを轟々(ごうごう)たる疾駆を続けてゆく。 とある隔室(コンパルチ
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年」1934(昭和9)年3月号
底本
- 久夫十蘭全集 Ⅵ
- 三一書房
- 1970(昭和45)年4月30日