ノンシャランどうちゅうき 04 みなみかぜふかば ――モンテ・カルロのまき―― |
ノンシャラン道中記 04 南風吹かば ――モンテ・カルロの巻―― |
冒頭文
一、天機洩(も)らすべからず花合戦の駆引き。駘蕩(たいとう)たる紺碧の波に浮ぶ、ここは「ニース突堤遊楽館(カジノ・ド・ラ・ジュテ・ド・ニース)」の華麗なる海上大食堂。玻璃(ガラス)張りの天蓋(まるてんじょう)を透して降りそそぐ煦々(くく)たる二月の春光を浴びながら、歓談笑発して午餐に耽る凡百の面々を眺め渡せば、これはさながら魑魅魍魎(ちみもうりょう)の大懇親会。凝血腸詰(ブウダン)をほおばる天使長
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年」1934(昭和9)年4月号
底本
- 久夫十蘭全集 Ⅵ
- 三一書房
- 1970(昭和45)年4月30日