ノンシャランどうちゅうき 06 らんしのなおう ――アルルうしずもうのまき―― |
ノンシャラン道中記 06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻―― |
冒頭文
一、ココナットから象が出る馬耳塞(マルセーユ)の朝景色。マルセーユの旧港(ヴィユ・ポール)。——この四角な、鱒(ます)の孵化場(ふかじょう)のようなもののなかには、あらゆる船舶の見本と、あらゆる国籍が詰め込まれている。二本檣(マスト)のゴエレット船、地中海の三角帆船(タルタアヌ)、マルタ島のトロール船、バクウの石油船。そうかと思うと古風な三檣砲艦(モニトール)なんてのもいる。だから、独逸(ドイツ)
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年」1934(昭和9)年6月号
底本
- 久夫十蘭全集 Ⅵ
- 三一書房
- 1970(昭和45)年4月30日