さくらのきのしたには |
桜の樹の下には |
冒頭文
桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる! これは信じていいことなんだよ。何故つて、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことぢやないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だつた。しかしいま、やつとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる。これは信じていいことだ。 どうして俺が毎晩家へ帰つて来る道で、俺の部屋の数ある道具のうちの、選(よ)りに選つてちつぽ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「詩と詩論 第二冊」1928(昭和3)年12月
底本
- 現代日本文學大系 63 梶井基次郎・外村繁・中島敦集
- 筑摩書房
- 1970(昭和45)年7月15日