ゆめのごとくしゅつげんしたかれ
夢の如く出現した彼

冒頭文

燃え上った十年、作家生活の火華は火華を産ンで、花火線香の最後に落ちる玉となって消えた夢野久作、その火華は、今十巻の全集となって、世に出ようとしている。 久作さんを知ったのは何時の頃からかは、はっきりしない。何でも幼い頃からで、産れながらに知っていたような気もする。 「夢野久作ってのが、頻りに探偵小説の様なもの——事実探偵小説の様なものであって、そん処(ジョ)そこらにある様な、単なる

文字遣い

新字新仮名

初出

「月刊探偵」黒白書房、1936(昭和11)年5月号

底本

  • 「探偵」傑作選 幻の探偵雑誌9
  • 光文社文庫、光文社
  • 2002(平成14)年1月20日