星はない 風もたえた 人ごえも消えた この驛を出た列車が すでに山の向うで 溜息を吐く 白いフォームに おれと おれの影と 驛長と 驛長の影と それだけがあつた 見はるかす高原は まだ宵なのにシンシンと 太古からのように暗い その中で秋草が ハッカの匂いをさせて寢ていた 海拔三千尺の 氣壓の輕さが おれの肺から 空氣をうばつて 輕い目まい このプラットフ