くろいわるいこうのこと |
黒岩涙香のこと |
冒頭文
一 黒岩涙香の名をきいて、いちばん先に思い出すのは彼が在命中の『万朝報(よろずちょうほう)』である。何というタイプか知らないが、平べったい活字で、トップからボトムまで、ぎっしりつめこんだ四頁の新聞によって、当時の私は、政治問題、社会問題に関するほとんどすべての知識と思想とを養われていたのだった。『万朝報』の下す批判は、私には時事問題を判断する尺度となっていた。 ジャーナリストと
文字遣い
新字新仮名
初出
「探偵趣味 第二年第一〇号」1926(大正15)年11月号
底本
- 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
- 論創社
- 2003(平成15)年11月10日