こさかいふぼくし |
小酒井不木氏 |
冒頭文
小酒井不木氏が死んだ。 生理学者として、法医学者としての博士については、私は、博士が非常に明晰な頭脳の所有者で医学界で期待されていたということだけしか知らぬ。実地の医学の方面では、闘病術その他の著者として、肺結核その他一般の慢性病の療法において抵抗療法の主唱者であり、一病一薬主義の正統派の治療法の反対者であったことくらいしか知らぬ。そしてまたここでは、博士のこれらの方面に触れる必要は全く
文字遣い
新字新仮名
初出
「東京朝日新聞」1929(昭和4)年4月4日
底本
- 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
- 論創社
- 2003(平成15)年11月10日