きはちじょうのこそで
黄八丈の小袖

冒頭文

上 「あの、お菊。ちょいとここへ来ておくれ。」 今年十八で、眉の可愛い、眼の細い下女のお菊は、白子(しろこ)屋の奥へ呼ばれた。主人(あるじ)の庄三郎は不在(るす)で、そこには女房のお常と下女のお久とが坐っていた。お久はお菊よりも七歳(ななつ)の年上で、この店に十年も長年(ちょうねん)している小賢(こざか)しげな女であった。 どんな相談をかけられたか知らないが、半晌(はんとき)ほど

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1917(大正6)年6月

底本

  • 文藝別冊[総特集]岡本綺堂
  • 河出書房新社
  • 2004(平成16)年1月30日