はやみみさんじとりものききがき 03 うきよしばいおんなかんばん
早耳三次捕物聞書 03 浮世芝居女看板

冒頭文

第一話 四谷の菱屋(ひしや)横町に、安政のころ豆店(まめだな)という棟割長屋(むねわりながや)の一廓があった。近所は寺が多くて、樹に囲まれた町内にはいったいに御小役人が住んでいた。それでも大通りへ出る横町のあたりは小さな店が並んで、夕飯前には風呂敷を抱(かか)えた武家の妻女たちが、八百屋や魚屋やそうした店の前に群れていた。 豆店というのは、菱屋横町の裏手の空地にまばらに建てられた三

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談雑誌」1928(昭和3)年1月

底本

  • 一人三人全集Ⅰ時代捕物釘抜藤吉捕物覚書
  • 河出書房新社
  • 1970(昭和45)年1月15日