ひきょうなどくさつ
卑怯な毒殺

冒頭文

病室の一隅には、白いベッドの掛蒲団の中から、柳の根のように乱れた毛の、蒼い男の顔が、のぞいていた。その顔の下半分には、口だけが孔(あな)となって、厚い繃帯(ほうたい)がかけられてあった。 ベッドの脇には干物(ひもの)のように痩(や)せた男が立っていた。彼は兀鷹(はげたか)のように眼をぎょろつかせて、病人の不思議な感じのする顔をじっと睨んでいた。床頭台上(しょうとうだいじょう)に点ぜられた

文字遣い

新字新仮名

初出

「サンデー毎日特別号」1927(昭和2)年1月号

底本

  • 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2002(平成14)年2月6日