あんま |
按摩 |
冒頭文
コホン、コホンと老按摩(あんま)は彼の肩を揉(も)みながら、彼の吸う煙草の煙にむせんで顔をしかめた。少し仰向き加減に、首と右肩との角度を六十度ぐらいにして居るところを見ると、生れつきの盲人(めくら)であるらしい。 郊外の冬の夜は静(しずか)である。 「旦那はずいぶん煙草ずきですねえ。三十分たたぬうちに十本あまりも召し上ったようですねえ」 と、彼は狡猾(ずる)そうな笑いを浮べて
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年 増刊号」博文館、1925(大正14)年8月号
底本
- 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
- ちくま文庫、筑摩書房
- 2002(平成14)年2月6日