あるじさつしゃのしゅき |
ある自殺者の手記 |
冒頭文
加藤君、 僕はいよいよ自殺することにした。この場合自殺が僕にとって唯一の道であるからである。 断って置くが、僕は決して、最近死んだ某文士を模倣するのではない。世間の人は二つの自殺が相前後して発生すると、後の例を前の例の模倣であると見做(みな)そうとする。しかし、これほど馬鹿げた話はない。そんな風にいうならば、世の中のすべての出来事は模倣でなくて何であろう。 が、僕はい
文字遣い
新字新仮名
初出
「サンデー毎日特別号」1927(昭和2)年9月号
底本
- 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
- ちくま文庫、筑摩書房
- 2002(平成14)年2月6日