てつのきりつ |
鉄の規律 |
冒頭文
一 今から何年か前、詳しく言えば、千九百——年の夏のある日、午後八時頃ポーラー通気性に富む上等の織物 の上着に白セル薄地の織物のズボンをつけ、新しいパナマをかぶって、顔にマスクをつけた、背の高い男が、銀座三丁目の常盤ビルディングの六階の一室へ、ふらりとはいってきた。 もう日はすっかり暮れて、華やかな電気の下を銀ブラのモガモダン・ガールの略、モボモダン・ボーイの略連が、目的のない
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年 第一二巻第一〇号」1931(昭和6)年8月号
底本
- 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
- 論創社
- 2003(平成15)年11月10日