いちにちじゅうのたのしきじこく
一日中の楽しき時刻

冒頭文

復啓、以前は夕方に燈火(あかり)のつく頃と、夜が段々更けて十二時が過ぎ、一時となり一時半となる頃が此上なき樂しきものに候ひしが、近頃はさる事も無御座候。樂しき時刻といふもの何日(いつ)よりか小生には無くなり候、拂曉に起き出でて散歩でもしたら氣が清々するかと存じ候へども、一度も實行したことはなし、何か知ら非常に急がしき事の起り來るを待設くる樣の氣持にて、其日々々を意氣地なく送り居候、然し、強ひて言へ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「東京毎日新聞」1909(明治42)年9月24日

底本

  • 啄木全集 第十卷
  • 岩波書店
  • 1961(昭和36)年8月10日