よしいくんのうた |
吉井君の歌 |
冒頭文
自分も作家の一人である場合、他人の作を讀んで滿足の出來ないことが、却つて一種の滿足である事がある。又時として、人が一生懸命やつた仕事にその人と同じ位の興味を打込むことの出來ないのを、その人の爲とも自分の爲ともなく淋しく思ふ事もある——人と人との間の超え難き隔たりに就いての悲しみと言はうか、或は又人間の努力の空しさに對する豫感とでも言はうか。 吉井勇君の歌集『酒ほがひ』を贈られて私は第二の
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「東京朝日新聞」1910(明治43)年9月23日
底本
- 啄木全集 第十卷
- 岩波書店
- 1961(昭和36)年8月10日