いわゆるこんどのこと りんちゅうのとり |
所謂今度の事 林中の鳥 |
冒頭文
(一) 二三日前の事である。途で渇を覺えてとあるビイヤホオルに入ると、窓側の小さい卓(しよく)を圍んで語つてゐる三人連の紳士が有つた。私が入つて行くと三人は等しく口を噤(つぐ)んで顏を上げた。見知らぬ人達で有る。私は私の勝手な場所を見付けて、煙草に火を點け、口を濕(うるほ)し、そして新聞を取上げた。外に相客といふものは無かつた。 やがて彼等は復(また)語り出した。それは「今度の事」
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「文学」1957(昭和32)年10月10日
底本
- 啄木全集 第十卷
- 岩波書店
- 1961(昭和36)年8月10日