さどがしまから |
佐渡が島から |
冒頭文
八月の末に僅か二週間島を離れた爲に時の觀念が一時全然破壞されてしまつたやうでした。島のそとの二週間が一個月に相當したからか、島へ歸つてからの一個月が二個月に相當したからか、九月の終までもう來月は十一月だなと思つて居りました。それほど島は單調で退屈なのです。 八月の中旬に佐渡を出た頃は、それまでは火のやうに赤かつた光線が、刄のやうに白く眼を射てゐました。それが下旬に歸つたときには既に快いコ
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「明星 」「明星」發行所、1925(大正14)年1月
底本
- 明星
- 「明星」發行所
- 1925(大正14)年1月